紐
ラーメン食べたくないですか?
まあいいやどうでもいいですね、
これから話すことは全部私の妄想で、
たとえば、
で出来ています。暇ならよければ。
頭は糸で組まれた
繊維のようなものだとして、
きみは、頭の端に、
ほつれた糸が垂れ下がったとしよう。
どうやらそこを引っ張ると組まれた糸たちがほどけて、中身が見えるらしい。
私はきみの頭の中身がしりたくて、
インスピレイションや考え事
感情、ことば、名前、
きみだけしか知らないことさえ
はっきりとこの目で見てみたいとおもう。
だから、わたしは例外なくきみの頭の端の紐へと手を伸ばそうとする
でも待てよ、と手が止まる
今ここで引っ張ってしまってもいいが、
どうせならこのこと、思いを知られずに
勝手に中身だけみて、
その後もう一度知らない間に縫い合わせてしまえば
現状のままでいられて、かつ、彼の頭の中身をみれるんじゃないか、とおもった。
だから私は彼が私の前の席で居眠りしている隙に、引っ張ることにした。
そんなに焦らなくったって、「その時」は来るのだから、とおもいながらゆっくりと時間の流れに身を任せてた。
そして遂に「その時」は忽然ときたのだった。
私はそっと糸に手をかけて、思い切り引っ張った。中にはガラクタのようなものと、光る物がたくさん詰まっていて、彼の才能や、感情などが、目が眩むほどの光を放って私の目を焼き殺そうとした
焼き殺されてしまってもいい、とおもった。
光る物は全て透明で、手に取ることは許されそうになかったので、頭の中身を見ながら、縫い合わせる作業へと移った。
なにぶん手先が不器用なだけあり、彼が起きる前に完成するのかと、心配になって仕方なかった
半分くらい縫い終わったところで、
「わたしは本当に彼の全てを知ったのだろうか」
とおもった。
確かに才能の出発点、知らない部分も全て知れたかもしれないけど、彼の本質には全く届いてないように思えた。
それじゃあ、どうしたらいいのだろう?
というか、わたしは彼に一体なにを求めているんだろう?
答えは簡単だった。
愛して欲しかった。
全てが知れればきっときみも愛してくれるだろうなんて安易な発想が私の中の深層心理に這い蹲っていたようで、全くもって迷惑なやつだ
そしてそんなこと気づいてしまった後で、
手を休めることなく考え事をつづけた。
ならば、どうすれば愛してもらえるだろう?とおもった。
そうだ、いまは彼の頭の中を見られる、前付き合っていた人をピックアップしてみよう、と思った。
中から何人かの女の人を引き抜いた。
その全ての共通点を探して見た。
「う〜〜ん…」
唸る声も虚しく、なに1つとして共通点が見当たらない、強いて言えば「性別が女」ということのみだ。
元あった位置に戻すと、もう八割が仕上がっていた繊維は、この、特別な体験に終わりを告げようとしていた。
未だ黒板の前で先生は一生懸命になって色んな文字で黒板を、黒から白へと塗り替えてくが
彼を含め机と一体化して寝息を立ててる者は少なくはない、可哀想な先生、
1針、1針、と完成していくきみの頭は、もう元どおりになりかけている。
チャイムが鳴るまであと6分
間に合え、間に合えと目を一点集中させて取り組んだ。
後少し、後少し、
きみの頭は完成して、なにもなかったようにチャイムは鳴って、いつも通りの時間が流れる
寝惚けたきみの横顔を見るとなんだか悪い気がした。
それでも私の中はみんなと違う、「いつもの日常」なんかじゃない
きみの頭の中身を全部見たんだから
なんて、ことができたらいいのになって、考えたところで「いつもの日常」は湯水の如く垂れ流されていた。
あーあ、つまんないの